2022年8月、当ブログは、来日したVeo technologies社、Jerry Jarnald氏にインタビューを行う機会を得ました。
ここにその模様を公開します。
——インタビューの機会を頂きありがとうございます。まず、あなたのポジションについて教えてください。
Jerry:はじめまして。私は、VeoでMarket Managerとして働いています。
——Market Managerとは、どのようなお仕事ですか?
Jerry:私の仕事は、各国でユーザーや関係者と会い、パートナーシップを構築することです。
——全世界を担当されているのですか?
Jerry:私が担当しているのは北欧地域、国名ですとスウェーデン、デンマーク、ノルウェー、フィンランド、アイスランド、ベネルクス地域はベルギー、オランダ、ルクセンブルグ、その他の地域としてスペイン、イタリア、そして日本です。
——それでは、改めてVeo社の沿革について教えてください
Jerry:Veoは、2015年にデンマークのコペンハーゲンで、Henrik(ヘンリック)、現在のCEOです、Jasper(ジャスパー)、彼はエンジニアです、そしてKeld(ケルド)の3名で設立されました。ケルドが子どもの試合に遅刻して、子どものゴールを見られなかったことから、新しいカメラのアイディアが生まれました。
このまったく新しいタイプのカメラは2017年、もしかしたら2018年に入ってからかもしれませんが、リリースされました。
——日本ではデンマークという国にあまり新しいテック企業のイメージがありませんが、どのような国ですか?
Jerry:実は私はスウェーデン出身で、スウェーデンとデンマークには、日本と韓国のようなライバル関係にあるため、多くを話せません。というのは冗談ですが、デンマークはとてもきれいで安全な国です。
Veoの本社があるデンマークの首都、コペンハーゲンには多くのテック企業もあり、とても素晴らしい街です。
——デンマークという国がテック企業に支援をしているようなことはあるのでしょうか?
Jerry:そこまでは分かりません。
——スウェーデンからデンマークに働きに来る方は多いのですか?
Jerry:スウェーデンとデンマークは1本の橋で結ばれています。この橋を舞台にした「The Bridge」という作品もあるので、Netflixでチェックしてみてください。※
その橋を通って、多くの旅行者が行き交っていますし、私のように移住する人もいます。
私はヨーテボリというスウェーデン第二の都市、日本の大阪に当たる街から移住しました。
※編注:この作品はオーレスン橋を舞台にしたサスペンスドラマです。Netflixにはありませんでしたが、Amazon Primeでシーズン3まで観ることができます。
——それでは、現在のVeo社の規模について教えてください。
Jerry:従業員は約270名、オフィスは、本社がデンマークのコペンハーゲン、アメリカのマイアミ、とても小さいけれどイギリスのロンドン、の3ヶ所にあります。
——現在のVeoのユーザーについて教えてください。
Jerry:約85ヶ国に約60万以上のユーザーがいます。国別では、USA、UK、オーストラリアの順にユーザーが多く、ちなみに日本は8番目、約450台のカメラが使われています。
——利用されている競技は、やはりサッカーが多いのですか?
Jerry:約80~85%がサッカーです。その他では、ラグビー、バスケットボール、ホッケー、ハンドボール、バレーボール、アメリカンフットボール、ラクロスなどに利用されています。ラグビーはどんどん増えていますね。珍しいところでは、フライングディスクのアルティメットのユーザーもいます。
——次に、Veo Cam 2について教えてください。当サイトでもレビューを準備していますが、販売状況はいかがですか?
Jerry:好調です。発売初日から納品待ちの状況になり、概ね3週間待ちとなっています。
——反響はいかがですか?
Jerry:やはりライブ配信機能は好評です。
ノルウェーのオスロで開かれたフットボールコーチカンファレンスに行ったときです。
カンファレンスが終わって夕方、約200名の参加者がスポーツバーでビールを飲みながらサッカー談義をしているところを抜け出し、スクーターで10分くらいのグラウンドにVeo Cam 2と三脚を持っていき、そこで行われていた10部の試合のライブ配信の設定をしました。
スポーツバーに戻ってバーのプロジェクターに私のパソコンを繋いで黙って見ていました。
すると、映っている試合をコーチたちがひどい試合だな、と話し始めました。10部の試合だから仕方ないですよね。そして、これはどこの試合だ、と言うのです。
そこで、私が、すぐそこで行われている10部の試合ですよ。私はカメラと三脚を置いてきただけで、自動的にこの映像が作られ、配信されているのです、と説明しました。
皆さん、とても気に入り、何台もご購入頂きました。
また、小さなクラブでプレーしている娘の姿を、アウェイの試合でも仕事をしながら確認できるという両親の話もありました。
これはとても新しい体験です。
——ところで、Veo Cam 1は販売終了となったのでしょうか?
Jerry:はい。修理対応に残しているだけで、販売は終了しました。お持ちの方が引き続き利用することは可能です。
——それでは、いま新しくユーザーになる人は、Veo Cam 2を買うしかありません。その場合もLiveオプションは必須なのでしょうか?
Jerry:いいえ、Liveオプションは必須ではありません。皆さんからのフィードバックで、必ずしもライブ中継を必要とするユーザーばかりではない、というご意見をいただき、変更しました。
——先日(2022年8月2日)、Veoは価格改定を発表しました。その理由を改めて説明して貰えますか。
Jerry:世界的に、部品、特に半導体などが値上がりしています。
また、我々は継続した開発を通じて、より良いサービスを提供していかなければなりません。
そのため、価格改定を実施しました。
ただ、私たちが提供するものは、ユーザーにとって新しい価格に見合う、価値のあるものとなっていると信じています。
——期待しています。
——続いて、Veoの今後の戦略について教えてください。「Veo Trailbrazer」も拝見しました。Veoは比較的小さなスポーツクラブを対象に、ライブ配信によるマネタイズを可能にするプラットフォーム、言ってみれば、アマチュアスポーツのYouTubeを作ろうとしているように思えます。
Jerry:まだ提供時期は分かりませんが、我々が目指しているもののひとつです。
——その戦略にはVeo Liveアプリが重要な役目を果たすと考えますが、アピールが少ないように思えます。
Jerry:まだ改善するところが多いと考えているためです。
スポーツのライブ配信のプラットフォームとしては、FacebookやYouTubeは最適ではないと考えています。
そのため、Veo Liveアプリは、もっと良いアプリにしていかなければなりません。
——Veo editorは、どのような改善が考えられていますか?
Jerry:Veo editorも毎日開発が進められています。
近々発表されるリリースもありますので楽しみにしていてください。※
さらに私が気に入っている開発中の新機能もありますが、残念ながら、私はここでお話しできる権限を持っていません。
※編注:このインタビュー後、新機能、ジャーナルを含めたアップデートが発表されました。
——私の要望としては、選手個人のAnalyticsデータが取れると良いですね、どの選手がどれだけ走ったか、など。
Jerry:さすがにそれは難しいですね。
ピッチの状況は様々ですし、三脚の高さなど撮影条件を揃える必要があるかもしれません。
——Veoでは、新しい戦略、たとえばさきほどのマネタイズプラットフォームのようなものは、世界同時に提供するのですか? それとも地域によって先行して提供することもあるのでしょうか?
Jerry:いえ、我々は世界同時に提供します。
子どもの頃、任天堂のゲームが日本で最初に発売され、スウェーデンでは1年後まで待たなければなりませんでした。
今はオンラインサービスがあるのですから、世界同時にサービスを提供することができます。
とても素晴らしいことです。
——Veo Camについて、次のモデルはありますか?
Jerry:Veo Cam 2を発売したばかりですよ(笑)。
私たちはiPhoneのように毎年新モデルを出したりはしません。Veo Cam 2.5とかね。
Veo Cam 1もきちんとサポートしています。
当然、Veo Cam 2が最後の製品と言うことはありません。
社内の開発チームは常に新しい製品、サービスについて考えています。
私はエンジニアではありませんので、どのような機能が搭載されるのか分かりません。
何年か後に、皆さんが驚くような、使いたいと思えるモデルを発表できると考えています。
——競合する企業や製品についてはどのように見ていますか?
Jerry:あえて名前は言いませんが、競合とされる製品より我々の方が1世代進んでいると考えています。期間にして2年くらいでしょうか。
いずれ、どこかの会社も似た製品を出してくるかもしれません。
ただ、我々にはアドバンテージがあり、いかに革新的であり続けるかという点において、真似をするだけの会社には負けませんし、その心配はしていません。
また、どんな競合であっても、我々のブランドはとても強いと考えています。
すでに多くの選手やコーチが我々の製品を利用し、とても気に入ってくれています。
その中には、たとえばケヴィン・デ・ブライネのような有名選手もいます。
これは非常に高い金額を積んだとしても、すぐに実現できるものではありません。
——日本のスポーツ市場についてはどう考えていますか?
Jerry:アジアで最も良い市場だと見ています。
中国はより大きく、お金持ちかもしれません。ただ、実態はよく分かりません。
私は日本に来て、J1やJ2の試合を観ました。とても素晴らしいサッカーをしており、皆さん、とてもフレンドリーです。
——ヨーロッパから見て、日本はユニークと感じませんか? スポーツメディアやグラウンドなどプレイ環境はまだ野球が中心です。
Jerry:確かにそう思います。我々は野球に対応していませんし、ユーザーもゼロです。
ただ、ワールドカップの日本代表チームを見ていると、とても強いです。
また、日本からの選手はとても優秀で、スウェーデンのリーグでも男女合わせて4,5人の日本人選手がプレーしています。
そのため、我々は日本のサッカーに良いイメージを持っていますし、リスペクトもあります。ポテンシャルも感じています。
——日本のVeoユーザーの印象はいかがですか?
Jerry:そうですね、他の国とあまり変わらない印象です。
Jリーグのチームに紹介した際、大変気に入ってくれましたが、日本の慣習を理由に購入まで至らなかったこともありました。
その一方で、サービスが日本語に完全に対応していないのに、世界で8番目に多いユーザーが、購入し、利用してくれています。
中には、ダウンロードした映像を独自に編集する熱心な方もいらっしゃいます。
いずれ日本のユーザー向けには日本語で提供したいとも考えています。
——Veo Editorはチーム名やタイトルも日本語で入力できるので、メニューなどすべてを日本語化する必要はないと考えますが。
Jerry:そうした意見も伺います。
たとえば、日本のコーチ向けの教材コンテンツ、Veoをどのように使うのか、映像を使ってどのように指導するのかといった映像やテキスト、こうしたものは日本語で提供したいと考えています。
——日本にオフィスを設ける計画はありますか?
Jerry:今はありません。が、将来的にはあるかもしれません。
しかし、どうでしょうか。アジアのどこにオフィスを持つべきか。
人数は3人から5人くらいで、どこの市場を担当するのか。
日本、韓国、中国の臨海地域…
まぁ、普通に考えれば、日本は良いオプションですね。
——製品サポート窓口は必要ありませんか?
Jerry:確かに日本語の話せるスタッフを用意したいですね。
それでも、たぶん日本国内ではなく、日本語ができるサポートスタッフを1人雇うところから始めることになるでしょう。
Jerry:また、我々はDHLと契約しており、カメラが故障したときなど迅速に引き取りが可能です。
返送された製品を見て、修理するか、新しいものに交換するか、判断しています。
そこで多少の待ち時間が発生してしまう問題がありますので、将来的には、不具合品交換用の在庫を持ちたいと考えています。
——日本でのパートナーシップはどのような分野で構築しようとしていますか?
Jerry:色んな分野で考えています。
さきほどの教材コンテンツも、日本のコーチや選手が登場する方が、良いでしょう。
そんなコンテンツ制作についても、Jリーグのクラブなどと話をしています。
また、今回はサッカーショップとも、お話しをする機会がありました。
いずれは協会レベルでお話しできる機会があればと考えています。
最後に、重要なのは我々が日本を最高の市場と考えていると言うことです。
——これからも期待しています。本日はありがとうございました。
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