Veo Camera ユーザーレビューブログ

Veo Cam 3 レビュー 〜購入すべき時期はいつ?

Veo Camの新モデル、Veo Cam 3のレビューを行っていきます。

Veo Cam 3は、2024年2月22日(現地時間)、オンラインイベント”Mastering Moments”の中で発表されました。
しかし、イベントの前からユーザー向けにはNew Modelと案内され、受注も受け付けていました。

前モデルのVeo Cam 2では、発表から出荷開始まで半年以上かかりましたが、今回のVeo Cam 3はオンラインイベント後から出荷開始となったようで、開発から生産、出荷までの体制は、この間にスピードアップされたものと見られます。

なお、Veo Cam 3には、SIMカードスロットのあるVeo Cam 3 5Gと、SIMカードスロットのないVeo Cam 3の2モデルが設定されましたが、ここでご紹介するのは、Veo Cam 3 5Gになります。

パッケージ内容

パッケージ内容を画像でご紹介していきます。

Veo Cam 2では、段ボールを開けると、オシャレな黒い化粧箱が現れましたが、Veo Cam 3では、シンプルにいきなりキャリングケースが現れます。

キャリングケースには、本体と付属品がすべて収められています。

付属品を袋などから出してみたところです。本体を中心に右上から時計回りで、キャリングケース、巾着袋に入っていたACアダプター、巾着袋、クイックリリースプレート、レンズ拭き、キャリングケース用ベルトとなります。

クイックリリースプレートは、新しい三脚に付属していたものと同じ、新しいタイプになっています。

また、これまで付属していた、ネットワークケーブル(LANケーブル)とUSB-Cアダプター(USB-Cとイーサネットの変換)が見当たりません。
いずれもVeoの有線接続には必要な付属品です。Veoとしては、コスト削減と共に、カメラ本体はWi-Fiでインターネットに接続してほしいという意思表示なのでしょう。
ただ、安定したインターネット接続には有線接続の方が確実という見方もあります。別途用意する場合、ネットワークケーブルはまだ量販店などでも入手はできますが、USB-Cアダプターは入手が難しいかもしれません。

パッケージ内容の確認は以上です。

カメラ本体の外観

カメラ本体を確認していきます。

外観の印象は大きく変わってはいません。目立つ緑色と三角形のフォルムは踏襲されています。
Veo Cam 2との比較では、側面が垂直に近く、BOXYな印象を受けます。

Veo Cam 2では、操作スイッチやインターフェイス、LEDが背面に移動していましたが、Veo Cam 3では、さらにSIMスロットも背面に移動しており、底面はさらにスッキリとしたものとなっています。

底面には、これまでの無骨なプレート金具に替わり、中央部が樹脂製のプレートになっています。この樹脂プレート部分が新しいクイックリリースプレートに嵌まって三脚に固定される形となります。
樹脂プレートには、準拠している各国の規格が印字されており、日本の技適マークも確認できます。
なお、Veo Cam 2まで印字されていた12桁のシリアルナンバー(S/N)は見当たりません。代わりに大きく5桁の数字が並んだシールが貼られています(上図上方)。

また、内部冷却用に空気取り入れ口が周囲を取り囲むようになっており、触ると底面が浮いているような箇所もあり、多少強度が心配になる感覚もあります。

Veo Cam 2からの変更点

チップセット

Veo Cam 2では、NVIDIA製チップセットを採用していることを発表時点から大きくアピールしていましたが、Veo Cam 3ではそうしたアピールはありません。

下の画像は、オンラインイベント”Mastering Moments”後に公開された、Veo Cam 3のプロモーション映像の1場面(12秒付近)です。

映像の流れとしては、基板上の最も重要なパーツを取り付けている場面になります。
このパーツ上に印字されている文字から、このパーツがSTマイクロニクスのマイクロコントローラ「STM32G071RBT6」であることが分かります。
このマイクロコントローラは、IoT機器などに使われているチップセットで、開発者向けにAIソリューションなども提供されていることから、これがVeo Cam 2のNVIDIA製チップセットに替わるパーツと見て良いでしょう。

ただし、完全に同じ役割を果たしているのかまでは不明です。他にメインのチップセットとなるパーツがあるかもしれませんし、この映像自体がダミーという可能性もあります。

いずれにせよ、チップセットを変更した可能性は高く、その影響は注目に値します。

バッテリー

Veo Cam 2の不満点として挙げられるのは、バッテリーです。
それも撮影時ではなく、電源を切っているにもかかわらず、1週間もすればバッテリーの残量はかなり少なくなってしまいます。
そのため、撮影前日にはしっかり充電の準備が必要になっています。

Veoによれば、電源を切ってもディープスリープ状態で動作をしているとのこと。そうした動作をしている機器は他にもありますが、Veo Cam 2のバッテリーの減り方は極端です。

この点、Veo Cam 3をしばらく使用している範囲では、電源を切った状態でのバッテリーの減り方は改善されています。
詳細に測定したわけではありませんが、1週間程度であれば、撮影前日に慌てるほど減ってはいません。
もちろん、撮影前日には充電した方がよいのですが。

バッテリー自体の性能が大きく向上しているとは考えにくく、上記のチップセットの変更などによる省電力の効果であると考えられます。

SIMカード

SIMカードスロットは、ライブ配信を行うために、カメラ本体に通信機能を付加するものとして、Veo Cam 2から搭載されました。
しかしながら、Veo Cam 2では、国内の携帯電話会社のSIMカードで通信ができたという実績はありませんでした。

前述の通り、Veo Cam 3では、SIMカードスロットは背面に移動しています。SIMを差し込むだけのVeo Cam 2とは異なり、Veo Cam 3ではトレイになっており、背面と同じ色の樹脂の突起部分をつまんで引っ張り出す形になっています。


このトレイにSIMを形状を合わせて載せ、スロットに差し込みます。SIMのサイズはVeo Cam 2から変わらず、nanoSIMになっています。

差し込む際には、きちんと奥まで差し込む必要があり、少々コツがいります。

  

肝心の国内の携帯電話会社への対応ですが、ソフトバンク、povo(KDDI)、mineo(NTT DOCOMO)を試してみました。
いずれも上記画像のようにSIMカードは認識はされていますが、通信を行うことはできず、アプリの表示もオフラインのままでした。

Veo Cam 3では、4G回線に加えて5G回線にも対応し、より高速な通信ができるとされていますが、これでは意味がありません。
今後、ファームウェアのバージョンアップなどで対応する可能性もありますが、Veo Cam 2の実績を見ると、あまり期待はできないでしょう。

今回、Veo Cam 3では、SIMカードスロットのないモデルも設定され、価格差もあり、Wi-Fi接続でライブ配信を行うこともできます。
日本国内においては、SIMカードスロットのないモデルを選択することをオススメします。

風切り音対策

Veoで撮影した試合映像を再生すると、ノイズとして風切り音が気になります。

Veo Cam 3では、レンズ脇のマイク部分にカバーが付けられ、風切り音の対策がなされています。

まだ風の音が気になる中での撮影はしていませんので、風切り音がどれだけ低減されているかは試せていません。
ただ、ピッチ上の声はクリアに聞き取れますので、カバーによってすべての音のレベルが低くなっているわけではないようです。

画質

画質の面では、Veo Cam 3はレンズの改善などに加えて、HDRに対応しています。HDRはHigh Dynamic Rangeの略称で、明暗差の大きい映像をよりリアルに表現する技術です。
この技術により、明暗差の大きいシーンでも、白飛びや黒つぶれを抑えられ、色彩がより豊かに表現されることで、よりリアルな映像が楽しめるとされています。

このHDRによる画質向上には期待したいところですが、現状では逆効果となっている面もありそうです。

上の画像は、Veo Cam 3で実際に撮影した試合映像の一場面です。
見てお分かりのように、左右のレンズの境目がはっきり分かるほど、色調が異なっています。
もちろん、夜間の試合で、照明灯の色調も場所によって異なる、難しい環境であることは確かです。
ただ、同じグラウンドでは、これまでVeo Cam 2で何度も撮影していますが、時間帯によって色調が変化していくことはあっても、ひとつの映像の中で、これほどはっきり境目が出ることはありませんでした。
また、同じ試合の別の場面では、右側だけチカチカするレベルで頻繁に映像の明るさが変化していました。

いずれも、明るさに関連する部分だけに、HDRによって明暗差が大きい範囲で記録した映像を上手く処理できていないように見えます。

We have identified an issue on VC3 recordings. In some cases the ISP responsible for white balance is off, causing a color difference between the lenses. We are working on a fix, and hope to be able to re-process all affected recordings.

Veoのシステム状況を公開しているサイトにも上記の記述が2024年4月26日の日付で掲載されました。

VC3の録画映像に問題があることが判明しました。いくつかのケースでは、ホワイトバランスを担当するISP(画像信号処理装置)が誤作動し、レンズ間で色の違いが生じています。現在、この問題の修正に取り組んでおり、影響を受けたすべての録画を再処理できることを望んでいます。

この書き方だと、クラウド上での映像処理過程の問題のようですが、何らかの対処がなされるまで、留意しておく必要があります。

BluetoothとWi-Fi

Veo Cam 3では、コントロールできる範囲も拡がったとアピールされています。

スマートフォンのアプリからカメラをコントロールする際は、まずBluetoothで接続され、プレビューやインスタント再生など映像をやりとりする際にWi-Fi接続となります。

Bluetoothは、バージョンが5.0から5.1、5.2、5.3と細かく進化しており、具体的な数字は公になっていませんが、新しいバージョンに対応しているのかもしれません。

一方、Wi-Fiに関しては、新しいバージョンへの対応は周波数など変更点も多くなり、スマートフォン側も対応する必要があるため、新しいバージョンになっているとは考えにくく、改善されているとすれば、アンテナの位置などを改善したのでしょう。

今回、試した範囲では、この通信範囲の拡大は感じられませんでした。
理由としては、スマートフォンとの通信が切れると、録画がストップするという不具合の情報があり、スマートフォンを近くに置いたままにしていたためです。

また、個人的な希望としては、Veoをコントロールできる範囲は、サッカーのゴールラインの長さ以上、すなわち、ベンチと反対側に設置したカメラを、ベンチの中からコントロールできることを期待したいところです。
それができると、録画の開始と停止のためにカメラの近くまで行って、スマートフォンのアプリを操作する必要はなくなります。
試合開始と終了の前後の慌ただしい時間帯を避けて、落ち着いてVeoの設定や片付けを行うことができるでしょう。

今回のVeo Cam 3での範囲拡大は、それほどの広さではないようですが、次の機会に、確かめてみたいと考えています。

まとめ

ここまで見てきたように、Veo Cam 3は、Veo Cam 2の正しい後継モデルと言えます。

Veo Cam 1からVeo Cam 2へのモデルチェンジには、ライブ配信という分かりやすく、目玉となる新機能がありました。
今のところ、そうしたVeo Cam 3だけが利用できる新しい機能というものはありません。

無理して目新しい機能を搭載せず、新しい通信規格への対応や高画質化、ユーザーが不満に感じている点の解消など、前モデルの既存機能の強化や充実を図ろうという製品コンセプトは、好ましい印象を受けます。

ただし、実際の製品は、まだコンセプトを評価できるレベルに達していないと言わざるを得ません。

筆者の手元に来た際のVeo Cam 3のファームウェアは0.0.6でした。
これほど小さな数字のファームウェアの製品は見たことがありません。メーカー内で開発途中ならまだしも、ユーザーの手元に届いているにも関わらず、です。

その後、ファームウェアはバージョンアップを重ねていきますが、0.0.7から0.0.8への修正履歴では、勝手に電源が入る不具合の修正、とあります。不具合のレベルとしても、低いと言わざるを得ません。

このあと、ファームウェアのバージョンは、一気に3.0.0まで上がり、Veo Cam 2との開発ラインの統合を発表しました。事実上、これが正式版という位置づけなのでしょう。

ただ、その後のファームウェアのバージョンアップでも、深刻な不具合の修正が報告されています。

これから購入を考えている方へ

新規でVeoの購入を考えている方は、すでにVeo Cam 2を注文することができなくなっていますので、自動的にVeo Cam 3を選ぶことになります。日本国内で使用するのであれば、Veo Cam 3をオススメします。

また、既にVeo Cam 2をお使いになっている方は、なかなか判断が難しいところです。
なにかVeo Cam 2に不満な点があり、それがVeo Cam 3で解消されているならば、購入は検討できるでしょう。
ただ、ひと通りVeo Cam 2に満足しているのであれば、しばらく様子を見るのも選択肢です。
このあと、Veo Cam 3でなければ利用できないサービスでも出てくるようであれば、そのタイミングで検討してもよいかもしれません。

いずれにせよ、まだしばらくは製品の不具合を覚悟し、徐々に解消されていくことを期待して臨む必要はありそうです。
安定した動作により、安心して使用できるレベルとなるまで、当サイトでも状況を注視していきたいと考えています。