Veoは、2023年8月末、同社のカメラ管理アプリ”Veo Camera” iOS版をメジャーバージョンアップし、Version3.0.0を公開しました(Android版は近日公開予定)。これに伴い、「インスタント再生(Instant Playback)」機能が公開されました。
これは、これまでクラウド上でしか確認できなかった、ボールを中心としたプレーを追いかける”follow-cam”(実況)映像を、Veo Camでの撮影を開始した直後から、Veo Cameraアプリ上で閲覧することができるというものです。
実は、この機能は、2021年8月にVeoがVeo Cam 2を発表した際に、Veo Cam 2の特長のひとつとして紹介していたものです。
その発表の内容をまとめた当ブログの記事内に、Instant Playback機能という文字が残されています。
そんな、2年越しに実現したインスタント再生機能をレビューしていきます。
インスタント再生機能を利用するために、特別な準備は必要ありません。
Veo Cameraアプリの最新バージョンから録画を開始すると、下記のような表示となります。
これによると、インスタント再生機能は、録画開始から45秒経過しないと利用できない、ということがわかります。
録画開始から45秒経過すると、表示は下記のように変わります。
注意書きがなくなり、中央のボタンがライブラリ(Library)への移動から、インスタント再生へのリンクに変わります。
このボタンをタップすることで、インスタント再生画面となります。
右下に「Initializing…」と表示されている初期化画面がしばらく続きます。
スムーズにインスタント再生画面に変わることもあれば、初期化画面が長く続くこともありました。
何分もこの画面が続く場合は、左上の「×」で前の画面に戻った方が良いでしょう。
これが基本的なインスタント再生画面になります。
画面をタップした場合の、各メニューアイコンが表示されている状態になっています。何も操作をしなければ、しばらくすると、これらのメニューは非表示となります。
右下の操作メニューは右から再生速度、AirPlay、Liveに戻る、となっています。
再生速度は、0.5倍速から2.0倍速まで設定することができます。
当然ですが、2.0倍速にしても、Liveより先は再生されません。
AirPlayは、主にApple製のデバイスからテレビやプロジェクター、スピーカーなどのAirPlay対応デバイスに、動画や音楽コンテンツをストリーミングしたり共有したりする機能です。
屋外のグラウンドで大型テレビなどに表示させることは、あまり想定できませんが、ベンチレベルであれば、iPadやMacBookに転送して複数人で映像を確認することはできそうです。
その他は、他の動画再生アプリと同じように利用できます。
画面中央の一時停止と再生アイコン、その左右に前後10秒送りのアイコン、画面下のスライダーで好きな位置まで映像を移動することができます。
録画開始の画面で表示されるように、インスタント再生の映像には約45秒の時差があります。
目の前で起きたプレイから約45秒経過して、アプリの画面に同じシーンが表示されることになります。
インスタント再生機能は、Veo Cam 2の内部で処理されていると考えられます。
Veo Cam 2の中で、”follow-cam”(実況)映像を生成し、その映像を、Wi-Fi接続したスマートフォンのアプリから閲覧しているわけです。
これまで、Veoの仕組みとしては、カメラ側では撮影のみを行い、”follow-cam”(実況)映像の生成を始めとする、あらゆる処理は、クラウド側で行っているとされていました。
Veo Camに搭載された2台のカメラで撮影したデータを合成し、ひとつの映像とした上で、その中からボールや選手を判別し、画面を切り出すという”follow-cam”(実況)映像の生成は、クラウド上の強力なコンピューティング能力によって実現しています。
そうした強力なコンピューティング能力を必要とする処理が、Veo Cam 2という小さな筐体の中で行なわれているというのは、驚きです。
ただ確かめてみると、クラウド上で処理される”follow-cam”(実況)映像とは差があることも分かります。
下記の画面サンプルは、いずれもシュートシーンで、”follow-cam”(実況)映像はゴール前を中心に生成されています。
【インスタント再生のアプリ画面サンプル1】
【サンプル1とほぼ同場面のVeo Editor画面】
【インスタント再生のアプリ画面サンプル2】
【サンプル2とほぼ同場面のVeo Editor画面】
【インスタント再生のアプリ画面サンプル3】
【サンプル3とほぼ同場面のVeo Editor画面】
インスタント再生のアプリ画面では、ズーム処理がほぼされていないように見えます。
ここから分かることは、Veo Cam 2の中でクラウド上の映像処理をすべて行っているわけではなく、クラウド上でも追加の処理が行われているということになります。
とはいえ、画面の角度は明確に異なるシーンを見つけることはできませんでした。クラウド上での映像処理に匹敵する処理がVeo Cam 2内で行われていることは間違いありません。
具体的に利用シーンを考えてみましょう。
いま目の前で行われている試合を映像で確認したい、というニーズは確かにあるでしょう。
多くは、試合前半の修正点をハーフタイムに指示したいという指導者になるでしょうか。
確かに、前半で指導者が気になった具体的な場面を映像で見せながら指示した方が、選手にも的確に伝わることが期待されます。
ただ、ハーフタイムの指示はどこで行われるでしょうか。ベンチでしょうか、ロッカールームでしょうか。
その場所は、Veo Cam 2からどれだけ離れているでしょうか。
インスタント再生機能は、Veo Cam 2内で生成された映像を、WiFi接続で閲覧する仕組みですから、Veo Cam 2とはWiFiでつながる距離にいなければなりません。
WiFiの最大接続距離は規格によって異なりますが、長くても100m程度とされ、実際にはそれより短くなることもあります。
そのため、ベンチがVeo Cam 2のすぐ横にあれば問題ないでしょうが、ピッチの反対側であったり、建物内のロッカールームだったりすると、WiFi接続ができず、インスタント再生機能が使えない可能性があります。
また、インスタント再生機能の映像には「ゴール(GOAL)」といったタグを付けることはできません。
ハーフタイムの指示に使いたい映像を素早く探し出すのは、ひと苦労するかもしれません。
2021年8月のVeo Cam 2発表時、Veo Cam 2の特長のひとつとしてInstant Playback機能が挙げられていたことは、先にご紹介しました。
その後、2022年5月にVeo Cam 2は出荷開始されますが、その時点でInstant Playback機能の記載は見当たらなくなります。
こうしたケースでは、よく製品仕様の中で「アップデートにて機能追加予定」といった記述をすることがありますが、そうした記述もなかったため、発表はしたものの、機能の実現を諦めたのかと受け止めざるを得ませんでした。
今回、Veo Cameraアプリ(iOS版)のメジャーバージョンアップにあわせて紹介されているインスタント再生機能ですが、アプリだけで、このような機能が実現できるとは考えられません。
2023年8月には、ファームウェアのバージョン2.0.0も公開されています。
ファームウェアのバージョンアップの具体的な内容は分かりませんが、Veo Cam 2に搭載されているNVIDIA製チップセットの最適化が進み、新バージョンのアプリの組み合わせにより、インスタント再生機能が実現できるようになったものと考えられます。
このように技術的にはたいへん興味深い、インスタント再生機能ですが、実際の利用シーンではまだ色々と制約もありそうです。
そうした制約がこれから改善されていくのか、どのような新しい利用シーンが提案されていくのか、インスタント再生(Instant Playback)機能がどのように進化していくのか、今後も見ていきたいと考えています。
なお、この記事公開時点まで、インスタント再生機能はiOS版のアプリでのみ可能となっています。
Android版アプリでも可能になってから公開しようと考えていましたが、まだまだ時間がかかりそうな感じですので、この辺で公開しておこうと考えた次第です。