新しく発表されたVeo Cam 2はどのようなカメラなのでしょうか。
発表イベントでの映像と、その後に公表されてた情報から、Veo Cam 1という名称になった既存モデルと比較しながら、確認してみました。
発表イベントでは、NVIDIA製チップセットを採用し、AI技術がパワフルになったことがアピールされていました。
NVIDIA社は、世界有数の半導体メーカーです。パソコンユーザーにはグラフィック性能を向上させる半導体、GPUのメーカーとして知られた企業です。AI技術の進化に伴い、GPUの技術との親和性から、AI企業としての側面でも注目されています。
今回、Veo Cam 2で採用されたのは、当のNVIDIA社のツイートから、Jetson Nanoであることが判明しています。
Good stuff from @veocamera using the #NVIDIA #JetsonNano. https://t.co/SrAsGZNEsz
— NVIDIA Embedded (@NVIDIAEmbedded) August 2, 2021
Jetsonは、NVIDIA社の組み込み用シングルボードコンピュータのシリーズ名です。シングルボードコンピュータは、1枚の基板の上に、中心となる半導体を動作させるために必要な周辺回路やインターフェイスを搭載したもので、様々な機器に組み込むことが容易になっています。
特に画像処理やAIの分野で利用されているJetsonファミリーの中で、Jetson Nanoは、もっとも下位に当たる機種です。安価で小型であることから、開発ボードは個人でのホビー用途にも人気があり、日本では入門書も出版されています。
同様のシングルボードコンピュータは、Veo Cam 1にも搭載されているはずです。WiFi接続ができ、ブラウザで操作できるということはWebサーバを内蔵していることを意味しており、これらはシングルボードコンピュータで実現していると容易に推察されます。具体的な機種名は公表されていないため、特定はできません(手元のVeo Cam 1を分解する勇気はありません)が、シングルボードコンピュータとして人気のあるRasberry Pi、もしくは類似機種が搭載されていることでしょう。
Veo Cam 1では、内蔵している2台のカメラで撮影した映像をそのままデータとして保存し、そのデータをインターネット経由でVeoのクラウドサービスにアップロードし、非常に横長となるひとつの映像として合成しています。
そのため、Veo Cam 1単体では、撮影した映像を再生することはできませんでした。
それに対し、Veo Cam 2では、Jetson Nanoの高い画像処理性能により、内蔵している2台のカメラで撮影した映像をカメラ内部で合成しています。それにより、スマートフォンのアプリから撮影している映像を再生するInstant playback機能が実現しています。
また、この画像の合成はほぼリアルタイムで行われており、インターネット経由での実況中継、Live-streaming機能を実現しています。
こうした高いコンピューティング性能を実現しているため、チップセットからの発熱が心配されます。
そのため、Veo Cam 2では、New cooling systemとして、底面に開けられた穴から吸気と排気を行っているイメージ映像をアピールしています。
こうしたチップセットの発熱を抑える仕組みはパソコンなどではお馴染みですが、Veo Cam 1には、こうした穴はまったくありませんので、製品デザインとしては大きな変更となります。
Veo Cam 2のもっとも注目される新機能は、インターネット経由での実況中継、Live-streaming機能でしょう。
この機能を実現するため、Veo Cam 2では、単体でインターネット接続機能を搭載しています。携帯電話会社が提供している回線を利用するため、スマートフォンなどでも利用するSIMカードを挿入するスロットが底面に設けられています。
Veo社は、SIMカードを販売しないとしていますので、利用するにはユーザーが自らSIMカードを用意する必要があります。
SIMフリーと呼ばれる、SIMカードが付属しない形で販売されているスマートフォンと同じように考えれば良さそうです。
一方で、SIMフリーの通信機器として考えた場合に、まだ情報が不足していることも否めません。
これについては、また別に記事としてまとめたいと考えています。
Veo Cam 2のインターフェイスはUSB Type-Cになりました。パソコンやスマートフォンでも標準となってきた規格です。
Veo Cam 1では、本体底面に電源/充電コネクタとイーサネット接続用LAN(RJ45)端子がゴムカバーの下に納められていましたが、Veo Cam 2では、この充電とインターネット接続のインターフェイスが1つにまとめられた格好です。
充電はUSB Type-C接続の充電アダプタが付属するようです。一方、イーサネット接続アダプタはオプションになるようです。
Veo Cam 2の内蔵ストレージ、すなわち撮影した映像データを保存する記憶容量は128GBとなりました。
Veo Cam 1が、同じく64GBとなっていますので、単純に2倍になったことになります。
Veo Cam 2の防水性能はIP54と公表されています。この等級は、完全には塵埃の侵入を防止できないが動作に問題はなく、水の飛沫による影響を受けないレベルを意味しています。Veo Cam 1も防水であることはうたわれていますが、IP表記での防水性能は確認できていません。
【2021.9.7追記】Veo社が公表したVeo Cam 1とVeo Cam 2の比較表により、Veo Cam 1の防水性能もIP54であると明らかにされました。
Veo Cam 1がほぼ密閉されている筐体であるのに対し、Veo Cam 2では、Cooling SystemやSIMスロット、USB-Cコネクタなど、開放されている箇所がいくつかありますので、あえて防水性能の等級を公表したのかもしれません。
発表では、レンズカバーやマイクロフォン、カメラ性能の改善が図られているとされています。この辺は数値でアピールされていないため、具体的な改善の程度は実物を見ないとなんとも言えませんが、期待したいところです。
最後にまとめとして、Veo Cam 2とVeo Cam 1のどちらを選ぶべきかを考えましょう。
Veo Cam 2でなければ利用できないのは、現時点では試合の実況中継、Live-streaming機能です。この利用を予定しているならば、選択肢はVeo Cam 2のみとなります。
また、Veo Cam 2で採用されているNVIDIA製Jetson Nanoの性能からすると、これからVeo Cam 1では利用できない機能が追加されていく可能性は少なくありません。試合の実況中継を利用する予定がなかったとしても、Veo Cam 2を選ぶ価値は大きいと考えます。
ただ、Veoのサービスをすぐに利用したい方は、Veo Cam 1を選択しても良いでしょう。
Veo Cam 2は2021年11月出荷開始予定で、当初は品薄が想定されます。また、新製品には不具合などの可能性がどうしても高くなりますので、そうした事態を避けたい方は、導入時期を慎重に検討された方がよいと考えます。