Veo Cam 2と共に発表された、Veoのライブストリーミングサービスは、試合の実況中継を行いたいチームにとっては、たいへん魅力的なサービスです。
では、このサービスは日本で利用できるのでしょうか。
これまでに発表されている情報から、利用するために必要となる要素を整理しました。
Veo Cam 2では、4Gの携帯電話回線を利用して撮影している試合映像をインターネット経由で配信することができます。
このライブストリーミング機能を利用するためには、月額€30のサブスクリプションのオプションが必要です。
4Gの携帯電話回線を利用するために、Veo Cam 2にはSIMカードスロットが用意されています。Veo社では、このスロット向けにSIMカードを販売することはないと発表しています。
そのため、利用するためにはユーザー自らSIMカードを手に入れ、Veo Cam 2に装着する必要があります。
いわば、SIMフリースマホと同じような利用の仕方が求められているわけです。
そこで、利用するために確認しておかなければならない情報をまとめておきます。
ライブストリーミングを実現するには、どのくらいの通信速度が必要になるでしょうか。
これについて、Veo社は、最低でも4Mbps、できれば8〜12Mbpsの上り通信速度が必要としています。
この通信速度は、実況中継する映像の解像度に依存します。より高精細の映像ほど、データ量は多くなるため、通信速度は速くなければなりません。
Veo社では、実況中継の解像度別に必要となる通信速度を公表しています。
規格上、4Gの携帯電話回線で、これらの通信速度は十分に超えています。
ただし、どんな場所でもというわけにはいきません。基地局と呼ばれる携帯電話会社のアンテナから離れるほど、通信速度は遅くなります。
日本の携帯電話会社は、実際の通信速度を実効速度として、その情報を公開しています。
それぞれ日本全国の都市を細かく区切って、測定した通信速度を検索できるようになっています。これを見ると、上り速度が10Mbpsに達していない地点も散見されます。
利用する際は、これらを参考にして、中継したい試合会場でどのくらいの通信速度が期待できるか、確認しておいた方がよさそうです。
ライブストリーミングで1試合を実況すると、どのくらいの通信量になるでしょうか。
通信量も、実況中継する映像の解像度に依存します。より高精細の映像ほど、データ量は多くなります。
Veo社では、解像度別に110分間、実況中継した場合の通信量を公表しています。
携帯電話の契約プランの多くは通信量をベースにしたものになっています。
どのくらいの頻度でライブストリーミングを行うかを想定し、月の通信量を見積もっておいた方がよいでしょう。
SIMカードにはサイズ別に3種類あります。
2021年現在、標準SIMはほとんど使われておらず、多くのスマートフォンはmicroSIMもしくはnanoSIMが使われています。
Veo Cam 2はどのサイズのSIMカードに対応しているのか、公表されていません(2021年9月現在)。
また、SIMカードには利用目的別でも「音声通話」「データ通信」「SMS」の3種類があります。
こちらはVeo Cam 2では通話もSMSもできないことから「データ通信」のみで充分なはずです。ただし、通常は「音声通話」SIMはデータ通信も可能であるなど、機能を組み合わせて提供されていますので、あまり種類を気にする必要はないかもしれません。
4Gで使われている電波の周波数帯は複数あります。
それぞれ携帯電話事業者が申請し認可された周波数帯で通信サービスを提供しています。
そのため、利用したい機器がサポートしている周波数帯によって、自分が契約している携帯電話事業者では使用できないというケースもあり得ます。
2021年9月時点での4Gの周波数帯と対応している携帯電話事業者の一覧は以下の通りです。
Bandとは、周波数帯を分かりやすく番号で表記したものです。
周波数帯の特性により、携帯電話事業者はつながりやすさを優先したり、通信速度の速さを優先したりしながら、基地局を配置し、サービスを提供しています。
残念ながら、Veo Cam 2がサポートしている4Gの周波数帯は、まだ公表されていません。
多くの周波数帯がサポートされていれば問題はありませんが、上記リストより少なかった場合は、利用できる携帯電話事業者を確認しておく必要があるでしょう。
技適マークとは、「技適」という略称で呼ばれる、日本の無線技術基準が守られていることを示すマークのことです。
日本国内で利用する上では、このマークを端末本体にシールで貼付するか、スマートフォンでは画面に表示することが求められています。
この公的な認証には2つの制度があります。
スマートフォンなど携帯電話事業者のサービスに接続するために必要なのが「技術基準適合認定」、電波をつかって通信するために必要なのが「技術基準適合証明」となり、Veo Cam 2の場合は、両方の認定と証明を受ける必要があると考えられます。
このうち技術基準適合証明を取るためには、国の認証を受けた審査機関(登録証明機関)に端末を検査をしてもらい、合格する必要があります。
日本の審査期間に検査してもらうのは大変そうですが、MRA(Mutual Recognition Agreementの略称)と呼ばれる相互承認協定により、EC、米国、シンガポールの企業は、その国の適合性評価機関による検査により、相手先の検査に合格したものとみなす、多国間の枠組みがあります。
総務省の登録外国適合性評価機関、すなわち上記のMRAを締結した国の評価機関として登録されている機関のリストには、Veo社のあるデンマークの名前こそありませんが、所在地がドイツやオランダの機関の名前が見られますので、対応自体は難しくないものと期待されます。
【2021年10月27日追記】
VeoのサポートページのVeo Cam 2に関するページ(https://support.veo.co/en/articles/5453037-veo-cam-2-details)に以下の記載がありました。
The camera is certified in Japan, Australia, UK, Canada, US, and Europe
これが技適を指しているかは分かりませんが、少なくとも日本のユーザーを意識した対応を進められているものと期待されます。
以上のように、まだVeo Cam 2には公表されていない情報がいくつかあり、ライブストリーミング機能を日本で利用できるか、まだ判然としません。
ここでは、そうした情報がクリアになったと想定して、国内通信サービスを検討してみましょう。
利用形態は2つのパターンが考えられます。
すでに契約していたスマートフォンのSIMカードを流用する場合と、新規にVeo Cam 2向けに契約する場合です。
前者の場合は、現在の契約のデータ通信量に余裕があるかを確認するだけで良いでしょう。
あまり頻繁に利用することがないのであれば、契約数を増やすよりはメリットがあるかもしれません。
逆にデメリットとしては、ライブストリーミングを行っている間、自分のスマートフォンでインターネットサービスが利用できないこと、またSIMカードを頻繁に抜き差しすることも心配です。
くれぐれもグラウンド脇で小さなSIMカードを落として見つけられなくなるようなことは避けたいものです。
後者の新規で契約する場合は、よりリーズナブルに使い勝手の良い契約プランを探せば良いでしょう。
Veo Cam 2では通話、SMSなどはできませんので、データ専用プランで十分となります。
MVNOと呼ばれる格安スマートフォン会社の方がよりマッチしたプランがあるかもしれません。
また、携帯電話事業者でもサブブランドでより魅力的なプランを発表していますので、タイミングを見て最適なサービスを利用したいところです。
いずれにせよ、そうした検討ができるだけの情報を、Veo社には早く公表してほしいものです。