Veoは、現地時間の2025年9月4日、新しいサービスとして、Coach Assist (Alpha)を発表しました。
これは、Veoのサブスクリプションの分析オプションとなる、Veo Analyticsに追加された新機能となります。
振り返ると、現地時間の2023年1月4日に開催されたオンラインイベント”The Analytics. Featuring You,”の中で、Analyticsの様々な新機能を紹介したあとに、今後の予定として『AIから次の試合に向けてのアドバイスをもらえる「COACH ASSIST」』と紹介されていたものです。
その時は、『2023年後半にリリースの予定』とされていましたが、だいぶ遅れての登場となりました。
なお、(Alpha)は、アルファ版との位置づけのようです。
Analyticsのユーザーはすぐに利用できますので、早速どのような機能なのか、見ていきます。
Coach Assistを利用するには、管理者権限のあるアカウントで、チーム設定ページでCoach Assistを有効にする必要があります。

チーム設定ページでCoach Assistを有効にして「保存する」をクリックすると、すぐにCoach Assistを利用できるようになります。
該当チームの試合映像のページに戻り、Veo Editorの右端に並んでいる分析アイコンをクリックすると、開いた分析ページの一番上にCoach Assistのコーナーが表示されます。

この「開始する」ボタンをクリックすると、確認画面となります。
ピッチの右側のチームと左側のチームは合っているか、最終スコアは合っているか、戦術は設定しているか、ジャーナルへの記述はしているか、といった項目が並んでおり、それぞれリンクが張られています。

「Coach Assistを実行する」ボタンの下に注意書きがあるように、1試合につき1回しか実行できないとのことですので、設定忘れがないことを確認して、ボタンをクリックします。

Coach Assistを実行すると、待ち画面になりアニメーションが表示されます。

処理が終わると、以下の5つの項目ごとにAIからの提案が表示されます。
それぞれに「この提案は役に立ちましたか」というフィードバックのアイコンとテキストを送信するボックスが用意されています。
この辺は、アルファ版として、AIの評価を行っている段階のようです。
実際のCoach Assistの提案内容を見ていきましょう。
Coach Assistは、過去の試合にも利用できるということで、2025年6月の試合で試してみました。
試した試合の結果は、1 – 2での敗戦、【フォーメーション】は4-4-2、【戦術】は”Counter-attacking”, “Overlapping full-backs”, “High pressing”の3つを選択しました。【ジャーナル】に記述はしていません。
2025年10月時点では、提案は英語のみとなるため、ChatGPTによる日本語訳も併せて掲載します。
Match summary
【自チーム名 】(【自チーム略称】) faced a disappointing defeat against 【相手チーム名】 (OPP) with a score of 1-2 in a league match on June 15, 2025. Despite a strong tactical approach using a 4-4-2 formation focused on counterattacking and high pressing, the execution did not yield the desired results.
**Recent Form**: In the last two matches, 【自チーム名 】 has struggled, recording a draw with 【前試合相手チーム名】 (0-0) and a heavy defeat against 【前々試合相手チーム名】 (0-4). The team has had issues converting chances and maintaining defensive solidity.
**Analysis & Tactical Takeaways**: In this match, 【自チーム名 】 maintained 49% possession yet struggled offensively, only mustering 7 total attempts, scoring once. This indicates ongoing issues with finishing and execution in the attacking third, where only 25% of their possession occurred. Defensively, with the opponents converting 40% of their attempts, there remains a persistent vulnerability that requires attention.
**Looking Ahead**: The team must focus on aligning their attacking strategies with finishing drills while enhancing defensive drills to maintain shape during high-pressure scenarios. The upcoming games present an opportunity for 【自チーム名 】 to reassess their tactics and improve performance under competitive stress.
試合概要
【自チーム名】 (【自チーム略称】) は、2025年6月15日に行われたリーグ戦で【相手チーム名】(OPP)と対戦し、1–2で惜敗した。カウンター攻撃とハイプレスを重視した4-4-2の戦術的アプローチを採用したものの、狙い通りの結果を得ることはできなかった。
最近の戦績:
直近2試合では苦戦が続いており、【前試合相手チーム名】戦では0-0の引き分け、【前々試合相手チーム名】戦では0-4の大敗を喫している。チャンスを得点につなげる決定力と、守備の安定性の両面に課題が見られる。
分析と戦術的考察:
この試合で【自チーム名】はボール支配率49%を記録したものの、攻撃面では7本のシュートにとどまり、得点は1点のみだった。攻撃サードでのボール支配が全体の25%にすぎないことからも、フィニッシュと攻撃の組み立てに課題が残ることが明らかだ。守備面では、相手チームが放ったシュートのうち40%を得点に結びつけており、依然として守備の脆弱さが顕著に見られる。
今後に向けて:
【自チーム名】は、攻撃戦術とフィニッシュ練習の連動を強化するとともに、高いプレッシャー下でも守備の形を維持できるよう、防御面のトレーニングを重点的に行う必要がある。今後の試合は、戦術を再評価し、競技的プレッシャーの中でパフォーマンスを向上させるための重要な機会となるだろう。
Game plan analysis
**Score: 5/10**
The execution of the game plan by 【自チーム名】 (【自チーム略称】) demonstrated some efforts but ultimately fell short for several reasons.
1. **Tactical Alignment**: The chosen 4-4-2 formation emphasized counterattacking and high pressing, yet the 36.0% possession in the defensive third indicates a failure to maintain pressure and secure ball control in midfield (compare this to recent matches with higher midfield occupancy).
2. **Offensive Efficiency**: With a total of 7 attempts and only 1 goal scored, the conversion rate of 14.3% shows that creating chances was undermined, reflecting a consistent challenge across recent matches, where finishing has been inadequate.
3. **Defensive Cohesion**: Despite a high pressing tactic, the team conceded 2 goals from 5 shots faced, highlighting defensive vulnerabilities. This mirrors trends seen in previous matches, where the lack of defensive stability has led to similar outcomes.
The combination of these factors necessitates a review of both tactical execution and player positioning in future matches, particularly in balancing defensive responsibilities with offensive ambitions.
試合プラン分析
スコア:5/10
【自チーム名】 (【自チーム略称】) は、試合プランの実行において一定の努力を見せたものの、最終的にはいくつかの理由で成果を上げることができなかった。
戦術的整合性:
採用された4-4-2フォーメーションは、カウンター攻撃とハイプレスを重視する戦術だったが、守備サードでのボール支配率が36.0%に達しており、中盤でのボール保持とプレッシャー維持に失敗したことを示している(直近の試合では中盤支配率がより高かったことと対照的である)。
攻撃効率:
合計7本のシュートで1得点にとどまり、決定率は14.3%。チャンス創出が十分に機能しなかったことを示している。これは最近の試合でも見られる傾向であり、フィニッシュの精度不足が継続的な課題となっている。
守備の連携:
ハイプレス戦術を採用していたにもかかわらず、相手の5本のシュートのうち2本を失点につなげてしまい、守備面での脆弱さが露呈した。これは過去の試合にも共通して見られる傾向であり、守備の安定性を欠いた結果、同様の展開を招いている。
これらの要因を踏まえると、今後の試合では戦術の実行方法および選手の配置を見直す必要がある。特に、守備面での責任と攻撃面での意欲とのバランスをどのように取るかが、改善の鍵となる。
Scoring efficiency analysis
**Score: 3/10**
The finishing efficiency for 【自チーム名】 (【自チーム略称】) in this match was notably poor, as evidenced by their conversion statistics.
1. **Low Conversion Rate**: With only 1 goal from 7 total attempts, the conversion rate stands at just 14.3%, significantly below the average of 20% observed in recent matches.
2. **Inside Box Struggles**: The inside box conversion rate was 0%, with all shots coming from inside the penalty area yet failing to find the net, showcasing a lack of composure in crucial scoring moments. This reflects a pattern where attackers are struggling under pressure, as seen in the previous matches.
3. **Shot Distribution**: Anomalies are present as 71.4% of the shots were taken from within the penalty box. The reluctance to shoot from distance (14.3%) further highlights the need for a more balanced shot selection strategy. Increased shooting confidence, especially in varied zones, is paramount for future matches. These points must be analyzed to guide training emphasis on finishing capabilities.
得点効率分析
スコア:3/10
この試合における【自チーム名】 (【自チーム略称】) のフィニッシュ効率は著しく低く、そのことは決定率のデータにも明確に表れている。
低い決定率:
7本のシュートのうち得点はわずか1点で、決定率は14.3%にとどまった。これは、直近の試合での平均20%を大きく下回る数字である。
ペナルティエリア内での苦戦:
シュートのすべてがペナルティエリア内から放たれたにもかかわらず、決定率は0%だった。これは、得点が必要な重要局面で冷静さを欠いたことを示している。前試合までの傾向とも一致しており、プレッシャー下での攻撃陣のパフォーマンス低下が顕著である。
シュート分布の偏り:
全シュートのうち71.4%がペナルティエリア内からであり、ミドルレンジからのシュートはわずか14.3%にとどまった。この数字は、シュート選択の偏りを示しており、よりバランスの取れた攻撃戦略が必要であることを示唆している。今後の試合に向けては、さまざまな位置からのシュートに対する自信を高めることが重要であり、これらの点を踏まえたフィニッシュ練習の重点化が求められる。
Trends and patterns
Matches analyzed: 10 (6 league, 4 friendly).
1. **Possession Stability**: Over the last 5 matches, 【自チーム名】 averages 49.5% possession, which aligns with this match at 49%. Despite this, the continuity in ball retention needs enhancement to transition effectively into attacking phases.
2. **Consistent Defensive Issues**: The average shots faced per match in the last 5 games is 6, which is consistent with allowing 5 shots against 【相手チーム名】. This highlights a recurring pattern of defensive lapses that must be addressed to minimize goals conceded.
3. **Finishing Woes**: The team has averaged a conversion rate of 14% across the past five games, similar to the 14.3% in this match. This trend underlines a critical area for improvement, where higher efficiency in goal-scoring opportunities is needed to secure better match outcomes.
傾向とパターン
分析対象試合:10試合(リーグ戦6試合、親善試合4試合)
ボール支配の安定性:
直近5試合での【自チーム名】の平均ボール支配率は49.5%であり、今回の試合の49%とほぼ一致している。しかしながら、ボール保持の継続性には改善の余地があり、攻撃フェーズへの効果的な移行を実現するための向上が求められる。
守備面の課題の継続:
直近5試合における被シュート数の平均は6本であり、今回の【相手チーム名】戦でも5本とほぼ同程度だった。このことは、守備面での集中力の欠如や連携ミスといった問題が繰り返されていることを示しており、失点を最小限に抑えるために早急な対策が必要である。
フィニッシュ面での苦戦:
過去5試合の平均決定率は14%であり、今回の試合の14.3%と同水準にとどまっている。この傾向は、得点機会をより高い確率で生かす必要があることを明確に示しており、試合結果を改善するためには決定力の向上が不可欠な課題である。
Training drill suggestion
**Title: Finishing Drills under Pressure**
**Theme**: Improving conversion rates under defensive pressure.
**Drill Description**: Begin with a series of high-intensity passing drills leading into a finishing phase. Set up a small-sided game where attackers (4 players) must navigate through a congested area, facing pressure from defenders (2 players), to create scoring opportunities. This drill emphasizes quick decision-making and accuracy during shots.
**Progression 1**: Introduce restrictions such as limiting the number of touches allowed or requiring players to pass before shooting to simulate a more realistic game situation.
**Progression 2**: Increase the number of defenders or reduce the space to challenge attackers further. This adjustment forces them to refine their shooting technique and make quicker plays while under pressure.
These drills not only emphasize scoring efficiency but also enhance teamwork and tactical understanding in crucial game moments.
**These YouTube videos may be helpful:**
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トレーニングドリルの提案
タイトル:プレッシャー下でのフィニッシュ練習
テーマ:守備プレッシャー下での決定率向上
ドリルの概要:
高強度のパス練習から始め、フィニッシュフェーズへと移行する形式で行う。小規模のゲーム形式(アタッカー4人 vs ディフェンダー2人)を設定し、アタッカーが密集したエリア内で守備のプレッシャーを受けながら得点機会を作り出すことを目的とする。このドリルでは、シュート時の素早い判断力と正確性が求められる。
進行ステップ1:
タッチ数を制限したり、シュート前に必ずパスを出すルールを追加することで、より実戦に近い状況を再現する。これにより、選手は素早く判断し、連携を意識したプレーを身につけることができる。
進行ステップ2:
ディフェンダーの人数を増やしたり、プレーエリアを狭くすることで、アタッカーにさらなる負荷をかける。この調整によって、選手はプレッシャー下でのシュート技術を磨き、より迅速な判断と動きを習得することができる。
これらのドリルは、得点効率の向上だけでなく、チームワークや試合中の戦術理解を深める効果もある。
参考になるYouTube動画:
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最後のTraining drill suggestionで提案の中にあるYouTubeへのリンクをクリックすると、”Finishing Drills under Pressure Coaching England Football Learning”の検索結果として、いくつかの映像コンテンツが表示されました。
これらの映像コンテンツはVeoが用意しているものではなく、元々YouTube上に公開されているものでした。
適切なトレーニングのための検索キーワードをAIが考えてくれたと捉えるのが良いでしょう。
Veoが公開している自社スタッフへのインタビュー企画の中で、Coach Assistを担当しているプロダクトマネージャーAlexander Harvey-Falkboo氏が、Coach Assistに、ChatGPTで知られる、OpenAIのAPIを利用していることを明らかにしています。
そこで語られているCoach Assistの仕組みは以下の通りです。
ここで気になるのが、VeoからOpenAIに送られているデータの中味です。
これについては、VeoのFAQページに説明がありました。
OpenAIに送信されるデータは上記の通りで、動画ファイルや音声ファイルは含まれないとしています。
これらのデータは、2023年以降、Analytics 2.0として、充実してきたAnalyticsのサービスに付随するものです。
そのため、それ以前、2022年より前の試合ではCoach Assistは利用できませんでした。
また、Analytics 2.0になってからも試合データの仕様に変更があったようで、比較的Analytics 2.0初期の2023年の試合では、Coach Assistを実行しても、試合結果の概要すら正しく反映されていないケースもありました。
前述のインタビュー企画の中で、Alexander Harvey-Falkboo氏は、Veo Analyticsの課題として、情報があまりにも詰め込まれすぎており、すべてが使われてはいない、としています。一方で、ユーザーからは「もっと指標を増やしてほしい」「もっとチャートが欲しい」といった要望もあり、「ユーザーが欲しいのは指標そのものではなく、より速く答えを得ることではないか」と考えるようになったとのことです。
そこで、「この試合で改善すべき主要な領域は何か?」といった質問に、動画を開いた瞬間に答えが表示されるのはどうか、といったアイデアが生まれた、としています。
そのアイディアを実現する手段に試行錯誤していた2022年後半、ChatGPTの登場により、方向性が定まり、開発の意向を発表したとのことで、これが前述の2023年1月のオンラインイベントでの発表だったようです。
このレビューを通して、Coach Assistが、Analyticsの各種の数字やデータをうまく要約していることを確認できました。
提案はまだ英文のみですが、ChatGPTが堪能な日本語を操っているように、日本語を始めとする多国語で表示することは、それほど難しいことではないでしょう。
前述のインタビュー企画の中で語られているように、Veoがねらいとしている、Analyticsの数字やデータをじっくり見て、レポートのようなものにまとめる時間もないユーザーにとって、Coach Assistは十分に活用できるものとなっている印象です。
またVeoの側としても、Coach Assistによって、Analyticsのユーザー満足度を上げ、サービスの利用継続を図っていきたいものと考えられます。
とはいえ、現時点でのCoach Assistは、チームが指向している戦術に対して、実際の試合の中でどれだけ実現できているか、判定するものでしかありません。
実際の試合のデータから、チームが指向している戦術とは別の戦術を勧めたり、フォーメーションの変更を提案したり、といった役割を果たすレベルではない点は、踏まえておく必要があります。
そうした戦術提案をAIができるようになるには、映像に映っている選手それぞれの能力の分析なども必要になるでしょうから、現時点では難しいことは容易に想像できます。
また、そうしたAIからの提案をチームが欲しているか、受け入れるか、という、それこそ人間とAIの付き合い方といった、問題が発生する可能性もありそうです。
それでも、前述のインタビュー企画の中で、プロダクトマネージャーAlexander Harvey-Falkboo氏は、今後の機能拡張について明確な構想を持っており、近く一般公開予定としています。
先に申し上げた通り、現状のAnalyticsで実現している分析のレベル、すなわち個々の選手レベルの分析までは行えていないため、Coach Assistの機能拡張の方向性がすぐに大きく変わることはないでしょうが、将来的には、継続的にチームの試合映像を分析していく中で、提案がよりチームに寄り添ったものとなり、最終的にはAIコーチがチームを強くさせた、と言えるようなレベルまでの進化を期待したいところです。