Veoは、現地時間2023年1月5日、オンラインイベント”The Analytics. Featuring You,”を開催し、Analyticsオプションに4つの新機能を発表しました。
実は発表の中で、この新機能を加えたサービス名について、「Analytics2.0」と画面に小さく映りはしたものの、はっきりとアピールはしていませんでした。
ただ、実際の画面に「Analytics2.0」と表示されている(下図赤枠)ことから、これからAnalyticsオプションはバージョン表記で新機能を管理されていくものと見られます。
Analytics2.0では、まずどちらのサイドが自チームなのか、明示しなければなりません。
上図の「Switch sides」ボタンをクリックすると、サイドの選択画面となります。
選択画面では、自動的に前後半のピッチのサイドが認識されています。
さすがにAIには、どちらが自チームか判断することはできませんので、2分の1の確率で逆になっています。
逆になっていた場合は、図のセンターサークル内に表示されている矢印のアイコンをクリックすることで、サイドを入れ替えることができます。
このサイドの選択画面は、あとからでもアイコンからいつでも呼び出すことができます(下図参照)。
これまでAnalyticsメニューのStatsは、Highlightで登録された以下の5種類のプレーをカウントしたものだけでした。
今回のAnalytics2.0では、「Yellow card」が割愛され、以下の5つが追加されました。
このうち、「Penalty kick(上図黄枠)」を除いた4種類が、新しい分析項目となります。
これらの説明は、上図の「How are these stats calculated?」をクリックすることで表示されます(下図)。
「Possession %」は、いわゆる「(ボール)ポゼッション」「ボール支配率」と呼ばれるもので、サッカー中継などでも馴染みのある項目です。
どちらのチームがボールを保持していたかを、割合で示した指標で、両チームの数字を足すと、100%となるようになっています。
「Pass completed」は、「パス成功回数」で良いでしょう。
「Possession minutes」は、「ポゼッション」を分単位で表したもののようですが、よく分かりません。
試合時間に比べて数字が小さく、アウトオブプレーの時間を含めていないと考えられますが、この数字を割合に直しても「Possession %」になりません。
上図の説明の文章も更新されているようですが、それでもはっきりしたことは分かりません。
「Possession won」は、「オープンプレーでボールを取り返した回数」といった説明となっています。
ボールへの寄せが早いという捉え方でよいのでしょうか。
なお、これら4種類の分析項目は、VeoのAIのみによる分析となり、手作業で作成したHighlightの内容は反映されません。
Pass stringsは、Analytics2.0で追加された、新しい分析項目です。
この指標は、チームがボールを失うまでにつながったパスの数とその回数を集計したものとされています。
サッカーでは、よく「パスが何本つながった」などと表現することがありますが、その数字がすぐに分かるのは、とても便利です。
「Period」で試合全体か、前後半、「Team」で自チームか相手チームかを選択して見ることができます。
「Average pass string」は「平均して何本パスがつながったか」、「3 to 5 passes」は「3〜5本パスがつながった回数」、「6 or more passes」は「6本以上パスがつながった回数」、「Longest pass string」は「最高で何本パスがつながったか」の数字となります。
「Total pass strings」は少々分かりにくいのですが、「2本以上パスがつながった回数」でよいでしょう。
Shot mapも、Analytics2.0で追加された、新しい分析項目です。
これは、シュートがどの位置から打たれたかを図示したもので、シュート位置は丸でプロットされ、ゴールとなったものは塗りつぶされた丸でプロットされています。
「Period」で試合全体か、前後半、「Team」で自チームか相手チームかを選択して見ることができます。
一見、とてもシンプルで分かりやすい分析結果のようですが、下図のような例もあります。
上図の赤い丸で囲ったゴールは、そのまま見れば、角度のないところからのスーパーゴールのようです。
しかし、実際にはコーナーキックからゴール前でのヘディングゴールでした。
つまり、ゴールにつながるプレーの始まりであるコーナーキックのプロットが、ゴールのシュート位置となっているわけです。
Veoのカメラ映像では、コーナーキックから直接入ったのか、ゴール前で誰かが触ったのか、人が目で見ても分かりにくいこともあり、現時点でのAIの限界なのかもしれません。
ただ、失点した側から見れば、このプロットでコーナーキックからの失点だと分かるのであれば、むしろ守備の課題として認識しやすいと言えるような気もしています。
また、正確性に関しては、より重大な問題もあります。
この分析項目は、VeoのAIのみによる分析となるため、Highlightを編集しても、この分析結果には反映されません。
VeoのAIが外れたシュートをゴールと誤判定した場合、手作業で誤判定のGoalのHighlightを削除すると、Statsのゴール数には反映されます。一方、Shot mapの分析結果には反映されず、塗りつぶしの丸がプロットされたままとなります。
ゴールの誤判定に関して、以前はサイドネット外側へのシュートをゴールとすることが頻繁にありましたが、その精度は向上しているようです。プレーの再開がゴールキックか、センターサークルからのキックオフか、も判断材料にしているのかもしれません。
そのためか、前後半問わず、ラストプレーでのシュートが外れたと同時に終了の笛が鳴った際に、ゴールと判定してしまう事例が、すでに2度ありました。
Pass locationも、Analytics2.0で追加された、新しい分析項目です。
ピッチを三分割し、パスがどの位置で多かったかをパーセントで図示したものになります。
試合の趨勢も分かりますし、チーム戦術がどこまで実現できていたか、パスの位置で読み取ることもできるでしょう。
これも、「Period」で試合全体か、前後半、「Team」で自チームか相手チームかを選択して見ることができます。
Analytics2.0により、VeoのAnalyticsオプションは、‘試合(ゲーム)の分析’から‘チーム分析’へと大きく進化したと言えるでしょう。
これまでのAnalyticsオプションは、Statsが試合の結果報告とも言うべき項目の集計、Heatmapが試合の趨勢を表していました。
これだけでも、試合の勝敗くらいしか記録を取っていなかったチームにとっては、大いに得られるものがあったでしょう。
しかし、Analytics2.0を見てしまうと、やはりゲーム分析に留まっていたことが実感されます。
もっとも、Analytics2.0の正確性は残念ながら不明です。
「ポゼッション」にしても「パス成功回数」にしても、Veoのカメラ映像だけでは、ボールが選手の影に隠れてしまうことは避けられず、100%正確とはならないでしょう。
それでも、試合内容の印象を反映した数字にはなっていますし、時系列での傾向を見るには、十分と言えます。
Analytics2.0がチーム分析というコンセプトを意識していることは、Analytics Studioというメニューでよく分かります。
Veoのチーム画面に「Analytics Studio」というタブが追加されています。
この画面では、直近7試合のデータの平均、時系列での推移、またピッチを模したマップ上には重ね合わせて表示されます。
これにより、ただ1試合の数字だけでなく、チームとしてどのような状態にあるのか、目標に向かって進んでいるのか、把握することができます。
もっとも、本格的なチームでは、メンバーを入れ替えたりフォーメーションを変えたりするため、並べて比べることができないケースもあるでしょう。
そのために、Analytics Studioでは、画面に表示する対象の試合を絞り込むことができます。
左から順に「対象となる試合数」「Analyticsオプションの有無」「試合形式」「フォーメーション」を選ぶことができます。
このうち、「試合形式」と「フォーメーション」は、各試合ごとに自ら入力するものですので、意図した通りに対象を選ぶことができます。
これにより、きちんと戦略を持ってトレーニングと試合での成果を確認していくチームにとっても、Veoが有用なツールとなったと言えるでしょう。
もちろん、そうしたことに人員も手間も避けなかった小さなチームにとって、戦略を持ったチーム作りに挑戦する、良い機会になることでしょう。
まだ、Analytics Studioには、「Comparison Radial」という開発中のメニューがあります。さらに、発表イベントでは「COACH ASSIST」という、AIによる助言機能も2023年後半に公開予定とされていました。
すでに発表以降、Analytics2.0には説明の文章を含め、日々修正が加えられています。新機能のいち早い公開と共に、各分析項目の精度向上にも期待したいところです。